保険の適用範囲が変わりました。隣接面を含む窩洞(複雑窩洞と言います)の場合、7番(第2大臼歯)の咬合関係があり過度な咬合力が加わらない場合の6番(第1大臼歯)小臼歯CAD/CAMハイブリッドインレーが適用になりました。

保険診療のCAD/CAMハイブリッドインレー導入にあたって

これまでキビキノ歯科医院では、出来るだけメタルを使わないで済むように隣接面を含む窩洞でも強度的に問題ない場合は、CR充填で修復処置を行っていましたが今後保険診療ではメタルを使わずに済む部位には上記のCAD/CAMハイブリッドインレーとさせてもらいます。

理由として、複雑窩洞のCR充塡処置は裂溝の再現や隣接面の再現をきちんとするためには技術力と時間が必要になります。保険点数が低く時間がかかり過ぎると採算がとれません。ただ、詰めるだけ(解剖学的形態を付与しない)であれば赤字になったりすることもないのですが、性格上そういった妥協が出来ないのでこれまで採算がとれないことも多々ありました。ですが、CAD/CAMハイブリッドインレーでは間接法にて外注できるので必要な時間も少なく赤字になることもありません。今後、経営的な判断も含めて複雑窩洞の場合は保険診療でのCR充填は辞めさせてもらいます。ご理解ください。(単純窩洞においては従来通りCR充填を行います。)

保険診療のCAD/CAMハイブリッドインレーと自費の違い

自由診療には、ハイブリッドインレーと自費診療のCR修復が競合する形(材料の強度、物性が似ている)で存在しますがそれぞれ違いを説明します。

自由診療のハイブリッドインレーとの違い

まず、部位の制限はありません。

次に、自由診療のハイブリッドインレーとは印象材、審美性、精度が変わってきます。

印象材:保険では寒天アルジネートを用い、自由診療ではシリコン印象材を用います。印象精度が変わってくるのでより良いものを作るにはシリコン印象が必須です。

審美性:保険では決まった色しかないので、自分の歯の色に合わない場合もあります。一方、自由診療では自由に色を選べるのでより良い色調のインレーが出来上がります。

精度:印象材の違いによる模型の精度が違うので模型上でどれだけ精度よく作っても出来上がったインレーの精度は自由診療のインレーには敵いません。

自由診療のCR修復との違い

部位の制限はないのですが、直接法による修復は部位や歯並び、口の大きさによって難易度が変化します。難易度が高いものは精度に不安が出るので希望されても間接法による修復しかできない場合もあります。

印象材:直接法なので印象材は使いません。

審美性:保険のCAD/CAMハイブリッドインレーとは違い細かい色がたくさんありその中から選ぶことができ積層できるので、より良い色調を作ることが出来ます。

精度:直接法はきちんと行えば、最も精度が良くできます。

歯質の保護:間接法と違い歯を削る量は最小限になります。

何を選べばいいの?

適用部位の場合は、安価に白い詰め物がしたい場合は保険のCAD/CAMハイブリッドインレー

より精度が良いものや、より審美性を重視する場合、残念ながら保険適用外の時は自由診療のハイブリッドインレー自由診療のCR修復

歯質の侵襲(切削量)を最小限にしたい(歯の寿命に最大限配慮したい)場合は、自由診療のCR修復

を選ぶと良いと思います。

裏事情込みでのほかの材料の簡単な紹介

一般的にインレーと呼ばれるものの材料に使われているのは下記になります。

ジルコニア:

TZP系とPSZ系のジルコニアがありますが、強度と審美性で大きく違います。何が違うの?と聞かれて即答できる歯医者はほとんどいません。簡単にいうとPSZ系はより審美性、TZP系はより丈夫さに振ったものです。目的に応じて使い分けています。詳しく聞きたい人は、気軽に聞いてください。時間があれば院長が登場して話し始めます。

セラミック:

審美性がもっとも高い材料です。衝撃に弱いので強い力がかかる場所には不向きですが、咬合力の方向や場所をコントロールできれば使える場所は増えます。ポーセレンや二ケイ酸リチウム、アルミナなどセラミック(場合によってはジルコニアもセラミックと呼ぶことも)と一般的に呼ばれるものは細かく分類するとそれぞれ特性や特徴、強度が違います。興味がある人は、ちょっとマニアックな院長に聞いてみてください。必要以上に詳しく話されるかもしれません(笑)。

ハイブリッドセラミック:

簡単に言うとCR(コンポジットレジン)とセラミックのいいとこどりを目指した材料です。誤解を恐れずにいうと、セラミックに近づける努力をした進化、改良されたCRです。通常、CRはフィラーと言われる物性や審美性をあげる粒子が添加されています。普通のCRに比べると、より良くなるよう工夫がしてあります。差別化のためのネーミングとして強化型CRなんてのより響きのいいハイブリットセラミックレジン(セラミックの仲間っぽく聞こえる)って名前になったんじゃないかと思います。ネーミングって大事です!

レジン:

CRでできたインレーです。過去に保険適用で選べたようですが今はなく、使用できる商品自体も存在しなくなりました。そもそも、CR黎明期に出た材料で後発の材料も出なかったためかなり粗悪なものだったと聞いています。

メタル:

保険適用される金属(金パラ、銀合金)ですらメーカー毎に千差万別です。保険指定の最低限の性能しか満たさないもの、工夫を凝らしてそれ以上の性能を持つものもあります。値段も大きく違います。現在、国の(立場が上なのを利用して、市場価格よりやすい金属代しかは払わずに嫌なら保険診療すんな的な)パワハラによって治療するたびに赤字になるような状態を強要され続けています。今回のロシアとウクライナの紛争によって突如フォーカスされましたが、10年以上に渡ってこのような状態が続いています。(現在は度重なる交渉、メディアによる圧力?によって以前に比べて解消されつつあります。)この話をはじめると長いので今回はここまで。後日気が向いたら別で書きます。

蛇足

セラミックやジルコニアは形態を作り終えてから最終的に焼成を行うことで強度を著しく増します。一方、ハイブリッドセラミックレジンは、ミリング法や築盛法など作り方に種類はありますが焼成は不要です。CAD/CAMはミリング法の一種です。

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