保険で使う歯科用金属(被せ物、詰め物)

2022年現在、歯科の保険で使える金属は大きく分けると金銀パラジウム合金、銀合金、チタンです。それぞれ、利点欠点があります。

金銀パラジウム合金:

字の通り金と銀とパラジウムがメインの金属です。強度と耐蝕性に優れます。歴史的には保険ができる際に、当時主に使われていた24Kや20Kの金の代わりに作られた合金です。当時は、貴金属を使うと高くなりすぎるために安価に使うことができる金属として開発されました。ただ、開発の段階でいろいろ国から注文をつけられ理想的な材料にはならずあくまで一時的な代替材料だったようです。一部の国では、為害性があると女性や子供にパラジウムを使った金属を使うことが禁じられている国もあります。日本では、禁止されていません。また、現在パラジウムが高騰し当初の目的(安価な金属)が満たせていません。

銀合金:

一般的には金パラに比べ耐食性が弱く強度に劣ります。ただし、一部の銀合金は強度の部分で大幅な改善を果たしており商品によっては耐食性でもだいぶ改善されています。パラジウムを含むもの、含まないものがあります。

チタン:

ごく最近保険認可がおりた金属です。加工に使う機械が高価で消耗が早いらしく、現時点では取り扱える技工所は限られています。適用範囲もまだ限定的で広く使われるようになるにはまだ、超えなきゃいけないハードルがたくさんありますが、金属の一つの理想形になるかもしれません。

キビキノ歯科院でのこれらの金属の使い分け

金銀パラジウム合金:

健康面の心配や長期的視野でみるとあまり積極的に使いたい金属ではないのでどうしても強度面で使わざるを得ない一部のロングスパンブリッジを除いて使っていません。

銀合金:

キビキノ歯科医院では、シルビジウムHという銀合金を使っています。銀合金の物性改善にはパラジウムを添加することが多く、そのような金属を使用すると健康面で不安が残ります。この合金はパラジウムを含まず強度や耐食性を大幅に改善した銀合金です。自分が比較検討した際には保険で使える金属では最も理想に近い(ロングスパンのブリッジが適用に入れば理想的)金属でした。値段はそれなりに高い(銀合金を使って保険でもらえる金額は一緒なので安い方が差額で儲かる)ですが、良いものを使うことを優先してこちらを使用しています。

チタン:

おつきあいのある技工所(自分がちゃんとしたものを作ってくれる、安かろう悪かろうではなくしっかりとした仕事をしてくれると判断した技工所)さんでは、機械を導入する予定がないとのことでしたので、技工所を探している段階です。そのため、現時点では積極的に使用しておりません。 現在は、技工所がみつかったので適用部位では積極的に使用しています。

理想を言えば

被せ物:

歯肉に接する部分のある被せ物に関しては生体親和性の高い材料(ジルコニアなど)を精度よく作ったものを使うのが理想です。セメントスペースが20〜50ミクロンほど必要(0ミクロンで作るとセメント分浮く、また接着力が発揮される厚さが確保できないのでとれやすい)ですので、それで設定した精度の良いものをつかえると最高です。精度を追求すると、今のところシリコンが安定して精度よく印象がとれます。最近流行りの口腔内での光学印象はまだまだです。歯肉縁上、画像取り込みしやすい形成、唾液のコントロールなどなど、精度よく取れる条件を満たすのがなかなか難しいようです。利点は、術者、患者、制作者ともに楽なだけでいいものを作るには向いてないように思います。審美領域では残念ながら実用に耐えません。ほとんどの場合、精度が犠牲になっているように思います。現時点では、模型に起こして製作したものの方がしっかりと良いものであると考えています。

詰め物:

直接法と間接法があります。

直接法:

直接お口の中で詰め物をする方法です。利点は必要最低限の部位を削るため切削量が少なくて済みます。セメントを使わないのでセメントラインが目立ちません。術者の力量によって差が大きく出ますが、上手くやれるのであれば理想的です。歯質の一部を取り込んで硬化する(象牙質における樹脂含浸層)ので歯質との一体化という面でも有利です。

間接法:

型取りをして模型上で詰め物を作る方法です。出来上がったものを、セメントで接着して完成です。利点は、上手な技工師さんであれば綺麗なものが出来上がってきます。直接法では難しい部位も綺麗に仕上がるので直接法が難しい場合や直接法では扱えない材料を使いたいときに選択します。

歯科用金属(保険)に対する考え

自由に選べるのであれば、患者さんが何を重視するかを聞き取りそれに応じた材料を選択することができます。けれども、保険診療ではその自由がありません。銀歯は金パラと銀合金、チタンの中から選ばなければなりません。耐食性(いつまでもギンギラギン)を最重視するなら金パラ、それ以外はシルビジウムH、今後適用が広がり作れる技工所が増えればチタンもいいと自分は考えています。

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