コンポジットレジンでの修復をお願いしたら『レジンアレルギーになるからセラミックじゃないとダメ!』
と、とある歯科医院で説明された患者さんがいらっしゃいました。もしかしたら違う内容のことを言ったのかもしれませんが面白いので聞いた内容が本当だという前提で検証してみたいと思います。
目次
レジンアレルギーの発症は結構レアケース。
日本ではかなりレアなアレルギーです。なるからダメって言い方は誇大表現に当たるんじゃないかな。もともとレジンアレルギーと診断された場合じゃない限り過度な対応はしなくて良いと思います。普通はなりません。
それでも不安な場合
レジンアレルギーの主な原因は残留モノマーと言われていて、これは未重合(硬化してない)部分に存在しています。しっかりと重合(硬化)させること。酸素(酸素は重合阻害をします)と触れ合う表面は未重合になるので研磨をしっかりして取り除くこと。
この二つを徹底するだけでも十分な対策になります。
レジンアレルギーの患者さんでもこれらをしっかりするだけで改善することもあるようです。
セラミックを接着するにあたってどのセメントを使うつもり?
そもそもセラミックインレーの接着はレジン系のセメントを使わないとセラミックの良さを引き出せません。レジンアレルギーを心配するならセラミックインレーも不可ではないでしょうか?
バイオセラミック系のセメント(被せ物には最適)も存在しますが色がかなり白いのでインレーの場合セメントライン(インレーと歯の境目)が白くなったりカメレオン効果(歯の色を透過させて色を合わせる)を使ったインレーだと審美性に難が出ます。なので、レジンアレルギーになるからダメって言いながらレジンセメントを使うセラミックインレーを奨めるのは意味がわからない。それとも、接着力がなく推奨されていない、適応のないレジンの入ってない合着材を使うつもりだったのでしょうか?
あくまで偏見に基づいた邪推
レジンアレルギーになると言いながら、レジンセメントを使うセラミックインレーをすすめているの時点で、おかしいなと思います。レジンアレルギーになるなんて本当は思ってないんだろうと邪推しちゃいます。
1 自費診療にしたかった。
これが理由なのであれば、説明が大げさで内容にも矛盾がみられるのでただの儲け主義じゃない?と思われても仕方ないと思います。
2 コンポジットレジン修復をきちんとやると場合によっては赤字なのでやりたくなかった。
これが理由ならば、ちょっと気持ちはわかります。ですが、アレルギーになるという説明はいかがなものでしょう?
日本の保険点数が安すぎる。歯科医師の善意(ボランティア精神)に基づいて著しく低く抑えられている保険の治療費が問題なのはわかります。同様の治療は発展途上国でさえ日本より高い治療費(日本より桁が一つ増えます)が要求されます。材料費人件費、かかる時間を考慮にいれると最低時給分の売り上げすらでないから、やれないと考える歯科医師がいても不思議ではありません。
けれど、自費への誘導の仕方に問題があると思います。
3 直接修復であるコンポジットレジン修復が上手くないので間接修復にしたかった。
保険では、どこで治療しても同じ質で同じ値段の治療が提供されるというのが建前です。ですがIPS細胞で有名な山中教授は臨床が下手すぎて研究者になったという話は有名です。人間ですので得意不得意があって当然です。それでも保険制度の建前上は同じ質の医療が提供されているらしいです。そんなことあるわけないとわかってもらえると思います。苦手な分野は上手な人にやってもらうのが一番の解決策です。なので、型をとって上手な技工師さんにお願いすれば上手に仕上がります。患者さんのためを思うならうまい人に紹介するのも一つの手ですが、自分の収入が減ることをわざわざしたくない。と考えてしまうのかもしれません。
まとめ
レジンアレルギーになるからCR(コンポジットレジン)修復はダメ、セラミックにしなさいとという発言に医学的根拠をもって賛同する歯科医師はおそらくいないと思います。そもそもレジンアレルギーは非常に稀です。さらに、もしレジンアレルギーの患者んさんだったとしても、レジン系のセメントを使わなきゃいけないセラミックインレーは使うことは避けたほうが良いはずです。小一時間どういうつもりか問い詰めたくなるお話でした。