根管洗浄の際に使う補助器具に関しては、超音波による活性化がよく選ばれているようです。
通常の根管においては紛れもなく第一選択です。
一般的に金属チップを用いたものが多いのですが、湾曲根管等では作用させるのが難しくなります。使用時には金属チップを根管壁に接触させてはいけません。接触させると歯質が削れ洗浄効果が落ちます。
作業長-1mmに設定して使わなければ根尖は十分にきれいになりません。洗浄効果があるのは金属チップ先端から1~2mmの範囲と言われています。
ですので湾曲根管では最大限の効果を得るには使用時に根管の3次元的な湾曲に沿ってチップを曲げ根管壁に接触させないように使わなければならないという臨床的に不可能なミッションを行わなければなりません。

根管内の洗浄に関する論文は数多ありますが臨床(特に難症例)を想定した状況での比較を行っている面白い論文があるので紹介します。
参考文献
:Comparative Analysis of Irrigation Techniques for Cleaning Efficiency in Isthmus Structures

:Cleaning Efficiency of Different Irrigation Techniques in Simulated Severely Curved Complex Root Canal Systems

各洗浄方法の手法(器具・時間・操作方法)

洗浄方法使用器具先端挿入深度振動・周波数洗浄時間
操作
針灌注
(NI)
シリンジ
30Gオープンエンドニードル
30G
根管長
−1mmまで
なし
3回×20秒
(各20秒ごとに3ml注入)
上下4mmの動きで操作
手動攪拌
(MA)
ガッタパーチャポイント(25/.06)25/.06
根管長
−1mmまで
なし
3回×20秒
(各20秒ごとに3ml注入)
上下4mmの動きで操作
音波
(SAI-EA)
EndoActivator
(Dentsply Sirona)
25/.04
根管長
−1mmまで
166Hz
3回×20秒
(各20秒ごとに3ml注入)
上下4mmの動きで操作
音波
(SAI-E)
EDDY
(KaVo SONICflex+エアスケーラー)
25/.04
根管長
−1mmまで

6,000Hz

3回×20秒
(各20秒ごとに3ml注入)
上下4mmの動きで操作
超音波
(UAI)
超音波アクチベーター
(Irri-S, VDW)
25壁に接触しない範囲で最深部まで
30,000Hz

3回×20秒
(各20秒ごとに3ml注入)
上下4mmの動きで操作
レーザー
(LAI)

Er:YAGレーザー
(AdvErL EVO, Morita)
P400FL根管入口部(オリフィス)
25 Hz, 50 mJ, 300μs

3回×20秒
(各20秒ごとに3ml注入)
チップは根管入口に静置

根管内の部位ごとの優劣

部位高い除去効率低い除去効率備考
全根管系LAI > SAI-E > 他SAI-EA, UAI, MA, NILAIが有意に最良。
主根管
(Root canal 1,2)
LAI > SAI-E > SAI-EA, MA > NI, UAI
LAI・SAI-Eが優位。
側枝管
(Coronal, Middle, Apical)
Coronal/Middle: LAI > SAI-E > UAI > NI > SAI-EA, MA
Apical: LAI ≈ SAI-E > 他
SAI-EA, MA
(特に側枝管で低い)

側枝管の清掃は全体的に困難
峡部(Isthmus)Coronal: LAI, SAI-E, NI, MA ≫ SAI-EA, UAI
Apical: LAI, SAI-E, NI ≫ UAI
UAI
(特にapicalで最低)
峡部ではLAI, SAI-E, NIが優秀。

概要

この研究は、3Dプリンターで作製した複雑な湾曲根管モデル{(曲率60°、半径5 mm22、曲率中心は頂点から5 mm、サイズとテーパーは25.06、長さ14 mm、円錐状の冠状リザーバー高さ6 mm、直径5 mm、4方向すべてにおいて、3つのレベル(頂点から2、5、8 mm)に外側管(直径0.2 mm)}を用いて、さまざまな洗浄活性化法(レーザー活性化(LAI)、EDDY、EndoActivator、超音波活性化(UAI)、手動攪拌(MA)、従来型針灌流(NI))による根管内のバイオフィルム模倣ハイドロゲル除去効率を比較したもの。

  • LAI(レーザー活性化灌注)が全根管系で最も高い除去効率を示し、EDDYSAI-E)がこれに次いだ。
  • 従来型針灌注(NI)や手動攪拌(MA)、EndoActivatorSAI-EA)、UAIは、全体的な除去効率でLAIEDDYより劣った。
  • 部位ごとの比較では、部位によって各手技の優劣が異なった。

    全体の除去率
    LAI(89.3% ± 5.9%)
    SAI-E(65.5% ± 3.3%)
    UAI(59.1% ± 4.7%)

    イスムスや側枝などの細かいことを知りたい方は原文あたってください。

まとめ

  • LAIは光音響効果による流体力学的な作用が特徴で、複雑な形態でも高い清掃効果を発揮した。
  • SAI-E(EDDY)は高周波(6kHz)振動による流体拡散効果があり、特に側枝管や峡部でLAIに次ぐ結果となった。
  • 針灌注や手動攪拌は、特定部位(特に峡部)では意外にも高い除去効率を示したが、全体的にはLAIやEDDYに劣る。
  • UAIは湾曲根管や複雑形態では性能が大きく低下した。

UAIが予想以上に成績が悪いのは、理想的な状態で使うことができないからと考えられます。臨床では理想的な環境下(作業長-1mmで根管壁に接触させない)で使用できない場合が多数存在します。そういった場合にはUAIは性能が大きく低下します。(本来、SAI−Eと同等)

UAIのピーキーさを解決する手段として金属ではない可撓性チップを用いたものが商品として出てきています。UAIを使用する際は根管壁に接触しても歯質を削ることなく、湾曲根管に追従するように撓み臨床的にも十分な性能が出せると考えられるタイプのものを選ぶか、曲げる必要のない症例を選ぶ必要があると考えられます。

個人的感想

一番の驚きは、UAIのピーキーっぷり(笑)。
適切な条件で使えないと結構効果が落ちてしまうのかということ。
次いでEndoActivator(SAI-EA)が、イスムスや側枝において通常の洗浄より劣るという点。
LAIはぶっちぎりです。コストが許せば使うべき。
EDDY(SAI-E)は症例を選ばず効果的なので、これ使っておけば一定上の効果は保証され大丈夫かなと。可撓性のあるチップを使ったUAIや複雑な湾曲を持たない場合も良いと思います。

LAIはレーザーなら何でもいいわけじゃなくEr:Yagレーザー及びEr,Cr:YSGGレーザーに限定されること。LAIの中でもPIPSという効果を得ようとした場合照射時間単位(パルス幅50μs)をコントロールできるもの(自分が知る限りフォトナレーザーのみ(めちゃくちゃ高価))に限られること。更にいうとSWEEPS(パルス幅25μs)とかも出てきてこの分野は日進月歩。おもしろいですよね

あくまで、こんな複雑な根管はめったにないので、通常は超音波で良いと思われます。
更にいうと、臨床ではNaOClやEDTA溶液を使うのでほとんどの場合はより良い結果が得られると思います。
難症例において、超音波一辺倒ではなくオプションがあると良いですね。って話でした。

論文のみをソースとしてAIに聞いてみた(追記)

さてここで終わるのも面白くないので、AIを用いてソースを学術論文だけにした上でシステマティックレビューの優先度を高く推論させてみました(笑)。ソースは46の論文やポジションペーパー。面白いです!以下結論。

第一選択:超音波活性化(PUI)

現在の臨床実践において最も推奨されているのは超音波活性化です。その理由は以下の通りです:

  1. 豊富な臨床的証拠:多数のランダム化比較試験で効果が実証されている
  2. 安全性の確立:根尖部への洗浄液押出しリスクが比較的低い
  3. 実用性の高さ:設備投資が比較的少なく、導入しやすい
  4. 専門医の高い採用率:世界的に専門医の使用率が高い

第二選択:EDDY

特定の症例において推奨される技術として位置づけられています:

  1. 複雑根管形態:根管吻合部や峡部を有する症例
  2. バイオフィルム除去:多菌種バイオフィルムの除去が必要な症例
  3. コスト効率:比較的安価で導入可能

限定的推奨:レーザー活性化洗浄(LAI)

最高の効果を示すものの、以下の制限により限定的推奨となっています:

限定的な普及:現在のところ限られた施設での使用

高い設備投資:導入コストが高額

技術習得の必要性:専門的な訓練が必要

高い設備投資:導入コストが高額

技術習得の必要性:専門的な訓練が必要

レーザー活性化洗浄(LAI)は、抗菌効果、スメア層除去、象牙質デブリ除去において最も優れた効果を示しますが、設備投資が必要です。

EDDYは、根管複雑部位の清掃において優位性を示し、比較的安価で導入しやすい利点があります。ただし、根尖部への洗浄液押出しリスクが高いため、注意が必要です。

超音波活性化(UAI)は、安全性と効果のバランスが良く、広く臨床応用されています。

臨床選択においては、治療目標、根管形態、安全性、経済性を総合的に考慮し、適切な技術を選択することが重要です。これらの技術はいずれも歯内療法の成功率向上に寄与する有効な選択肢として位置づけられています。


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