「歯の根の治療(根管治療)は再発しやすい」「何度も腫れるから、抜いてインプラントにした方がいい」

もしそのような説明を受けたとしたら、少し立ち止まって考えてみてください。その比較は、少し公平ではないかもしれません。

日本では国民皆保険制度のおかげで、誰でも安価に治療を受けられます。しかし、根管治療に関しては、その成功率に「制度の壁」が大きく影響している現実があります。

ここでは、日本の現状を踏まえた上で、本当に公平な「歯とインプラントの比較」について説明します。


1. 日本の保険治療の現実(成功率の壁)

非常に残念なデータですが、日本の保険診療における根管治療の成功率(病気が治る確率)は、専門的な基準に比べて著しく低い傾向にあります。

過去の疫学調査や報告によると、根の先に膿がたまっているケースなどを保険診療の範囲内で治療した場合、その成功率は約25〜50%程度にとどまるというデータもあります。

なぜ、これほど低いのでしょうか?

それは歯科医師の腕の問題というより、保険制度の制約上、以下のような「世界標準の処置」を行う時間やコストをかけることが極めて難しいためです。

  • ラバーダム防湿の不使用: 唾液中の細菌が根の中に入るのを防ぐゴムのマスク。
  • 時間の制約: 本来1時間以上かけて行う丁寧な治療が難しい。
  • コストによる制約:効果の高い器具がコスト面が理由で使用できない。
  • 精密機器の不足: マイクロスコープ(顕微鏡)やCTを使えないことが多い。

この環境下での治療結果だけを見て、「根管治療は予後が悪いから、インプラントの方が良い」と判断するのは早計です。


2. 「正しく行われた歯内療法」の実力

一方で、専門的なトレーニングを受けた歯科医師が、十分な時間をかけ、マイクロスコープやラバーダム防湿を用いて行う「正しく行われた歯内療法(専門的治療)」の成功率は全く異なります。

  • 初回治療の成功率: 90%以上
  • 再治療の成功率: 90%以上

このように、適切な環境と技術で行えば、根管治療は非常に高い確率で歯を治すことができます。これが、本来の「歯を残す治療」の実力です。


3. フェアな比較:専門的根管治療 vs インプラント

インプラントと自分の歯、どちらが長持ちするかを比べる時は、「正しく行われた根管治療」と比較しなければなりません。

比較対象生存率(8〜10年後)
インプラント約 97%
正しく行われた根管治療(自分の歯)約 97%

データが示す通り、適切な治療さえ行われれば、自分の歯はインプラントと同等の生存率です。

「保険の治療でダメだったから抜歯」と決める前に、「専門的な治療(自由診療)を行えば残せるのではないか?」と考えてみてください。

〜「成功率」ではなく「生存率」を見る理由〜

「自分の歯」と「インプラント」を比べる時、医学的には「生存率(その歯が口の中に残っている確率)」という言葉を使います。

なぜ「成功率」で比べないのでしょうか? それは、天然の歯と人工物(インプラント)では、「成功」のゴールが全く違うため、単純比較ができないからです。

  • インプラントの成功とは: 物理的な安定を意味します。
  • 根管治療の成功とは: 生物学的な治癒を意味します。

このように土俵が違うため、公平に比較できる唯一の共通指標である「抜かれずに口の中に残っているか(生存率)」を使って、比較します。


4. 歯を残すための最善の技術

専門的な治療では、以下のような技術を駆使して、従来なら抜歯と言われた歯も保存できるようになっています。

  • マイクロスコープ(歯科用顕微鏡): 最大で肉眼の20倍以上の倍率で、精度の高い治療を行います。
  • CBCT(歯科用3次元CT): レントゲンには写らない病変の広がりや、複雑な根の形を正確に把握します。
  • CSC(MTA)・再生療法: 生体親和性が高くより良い効果をもたらす薬剤や材料を用い、神経を守ったり、組織を再生させたりします。

インプラントは「天然歯の下位互換」です

インプラントは素晴らしい技術ですが、あくまで「どうしても保存できない歯」を補うためのものです。
性能としては、あくまで天然歯の下位互換です。残せる歯を抜いてまで、インプラントにする医学的正当性はありません。

自分の歯を大切にしたいのなら

日本の保険治療の統計データ(低い成功率)だけを鵜呑みにせず、「世界標準で正しく治療すれば、自分の歯はインプラントと同じくらい持たせることができる」という事実を知ってください。

同じ自由診療という枠組みで考えるのであれば、
『抜歯してインプラント』と決断する前に歯内療法の専門的な知識を持つ歯科医院で『自分の歯を大切にしたい。より良い治療を受けたい。』と相談することをお勧めします。

自由診療にはなりますが、希望が叶う可能性が高まると思います。


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