キビキノ歯科医院では保険診療においては、単一ポイント根管充填法と呼ばれる手法にキャナルシーラーBG multiを用いた垂直加圧充填を行っています。
(自由診療においては、違う材料や手法を用います。)
この手法の要は、使用するシーラーです。シーラーの選択を誤ると予後が非常に悪くなります。
では、シーラーに求められる条件は何でしょう?
根管シーラーに求められる理想的な条件
シーラーに求められる理想的な条件をGrossmanらの提案を元に設定されました。
現在これらの条件を完全に満たすシーラーは存在しません。
近年注目されているバイオセラミック系シーラーは、これらの条件を多く満たしているとされています。
理想的な条件
1. 生体親和性
周囲組織に対して刺激や毒性がなく、炎症やアレルギーを起こさないこと。
2. 組織液・体液に対する不溶性
長期間にわたり溶解・分解せず、封鎖性を維持できること。
3. 構造的安定性
根管内での圧力や応力に耐えうる強度を持つこと。
4. 十分な流動性・操作性
複雑な根管形態にも適応でき、操作しやすいこと。
5. X線不透過性
X線写真で明瞭に確認でき、術後の評価が容易であること。
6. 抗菌性
残存細菌の増殖を抑制し、再感染を防ぐ性能があること。
7. 根管壁への密着性
根管壁や根管充填材としっかり接着し、隙間なく封鎖できること。
8. 無着色性
歯質の変色を起こさないこと。
9. 適切な作業時間
臨床操作に十分な作業時間を確保できる硬化速度であること。
10.除去の容易さ
再治療時に除去が容易なこと。
BC系シーラーが満たしている条件
1. 生体親和性
2. 組織液・体液に対する不溶性
3. 構造的安定性
4. 十分な流動性・操作性
5. X線不透過性
6. 抗菌性
7. 根管壁への密着性(シーラーの剪断強さに依存)
8に関しては、満たしているものとそうでないものがある。
BC系シーラーの登場でコレまで脇役でしかなかったシーラーがデメリットを克服することで根管充填の主役として活躍できるようになりました。(それまでは、シーラーの量は少ないほどデメリットが小さいためあくまで主役はGP。)
BC系シーラーのこまかいこというと
キャナルシーラーBG multi はバイオアクティブガラス(ケイリン酸塩ガラス)がハイドロキシアパタイト生成能を有するという意味でバイオセラミック・マテリアルの要件を満たしています。
ですが、他のケイ酸カルシウムを主体とする水和反応で硬化するBC系のマテリアルとはちがう材料と考えられます。(接着強さや硬化反応の違いによる構造的安定性の違いなど)
良い面もあれば、悪い面もあります。主成分が全く違うため、ケイ酸カルシウム主体のBCやMTAが持つ性質や特性はそのまま当てはまりません。
理想的なことをいえば、ケイ酸カルシウムを主体とする水和反応で硬化するBC系シーラーを用いたほうが良いと考えています。ですので自由診療においてはキャナルシーラーBG multiは使用していません。
その根管において、最適な材料や手法で妥協の無い治療を行うのがキビキノ歯科の自由診療における治療です。ですので、同じ歯の根管ごとに違う手法や材料での根管充填を行うこともあります。
BC系のシーラーと言ってもレジンが含有していたり硬化反応が水和反応じゃなかったりと製品名は伏せますが本来の性能が出せないだろうものも混ざっています。特にレジン含有しているものは、水和反応型の材料に比べ劣るという報告が複数あります。ので、キビキノ歯科においては使用していません。
使い分け
保険診療における歯内療法の成功率は、25%〜50%程度というデータがあります。
50%〜75%で再治療が必要な保険診療においては、再治療の可能性を考えた治療が前提になります。その際、除去が容易な材料であったほうが良いはずです。そう考えると、キャナルシーラーBG multi はコスト面でもそうですが除去がしやすいためちょうど良いと考えています。
翻って、自由診療においては専門的な知識、技術で治療を行えば90%以上の治癒率です。再治療の可能性は低く、そもそも治療において妥協はしないのでやれることをやってそれで駄目なら外科的歯内療法が第一選択になります。そのため、より良い材料ですが再治療がほぼ不可能になるMTAを用いたり除去性が悪くてコストも高いBC系シーラーを用いて治療をおこなっています。
本当はね、保険でも、、、
2024年5月をもって開業から10年が経ちました。
この5月でまる11年経ち12年目に入りました。
保険で良い治療を行うことは本当に難しいことだと実感しております。
診療報酬が少なすぎて薄利多売を行わなければ採算が取れないもの、やればやるほど赤字が増えていくもの、、、、。
これまで歯内療法においては趣味だからと自分にも言い聞かせて赤字でも強がって頑張ってきました。
でもね、10年間の赤字の累積計算してみたんです。歯内療法だけで少なく見積もって3桁万円後半、下手すると4桁万円いってしまうんですよね。患者さんのことを考えて良い治療を行えば行うほど赤字がかさむというジレンマ。
長年(前世紀から)、歯科医師会や保険医協会が厚労省に対して要望してきていますが聞き入れらておりません。ストライキをしてはならない等の法律があり強硬な手段に出れないことをいいことに上記のようなことを四半世紀以上強要しています。
どうぞ、保険で良い治療を行うために保険医協会などで署名を募集しておりますので機会があれば署名していただければ助かります。