いろいろなところで、いろいろな議論がなされています。

これを、考えるにあたって参考にできる論文は初期治療に関しては8本、再治療に関しては11本の論文だけがエビデンスとして使えるようです。(byフリードマン教授:歯内療法関連の論文は、読んで字の如く全て読んで評価している教授でエビデンスの神様と呼ばれています。)
以下神様の受け売り(笑)

論文が書かれた時期(1998〜)
治癒には時間が必要なので長期間の経過を追ったもの
症例を選んでいないもの(大きな根尖病巣があるものは除外などしちゃだめ)
症例数が少数ではなく多数なもの 
治っている最中と判断できるものを含むのか含まないか などなど
公平か否かバイアスの有無、評価の仕方いろんな条件を勘案していきます。

そうやって読むべき価値のある論文とそうでないものを選別していくと1998年以降エビデンスとして使える論文は上記の本数です。これを最新最善のエビデンスとよんでいます。

最新最善のエビデンスベースで歯内療法の成功率というものを取り上げると、最初に注釈が付きます。

成功とは何をもって成功とするか(痛くなくなったら?病気がなくなったら?自覚症状がなくなったら?患者さんが満足したら?)が難しくなるので、健康率(組織が健康な状態になっている)として考えましょう。です。

というわけで、世間一般の玉石混交のエビデンスを頼りに健康率を考えると
初期治療で90%以上、再治療で80%と言われています。

が、最新最善のエビデンスに基づくと
根尖生歯周炎の有無が健康率に影響を与えるが初期治療か再治療かで有意差はないとのことです。
根尖性歯周炎の無い場合は90%程度、有る場合は80%程度と違う要素で健康率が変わります。

面白いですよね。

このことからわかることは、
歯髄壊死と診断できた場合、

最新最善のエビデンスベースで考えると根尖性歯周炎ができるまで待つと有意に成功率が下がるので早期介入した方が予後は良いとわかります。

ですが、一般的に考えられてるエビデンスベースで考えると待っても成功率が変わらないと考えられるので、患者さんが様子を見たいと言ったら、予後に差は出ない(どっちにしろ初期治療なので)から経過観察という判断をしてしまうかもしれません。
実際には、感染が存在し根尖性歯周炎(根尖病巣)ができてしまうと成功率が下がります。

同じ診断でも、信頼できるエビデンスベースで判断した場合とそうでないもので判断したもので結果的に予後に大きな差が出ちゃうのです。

フリードマン教授は、よくないエビデンスはクソだ。クソから生まれるものはクソなのでシステマティックレビューでも、もとの論文にクソが混ざるとそのシステマティックレビューに価値はないと言い切っちゃってます。

これも、一般的にはシステマティックレビューは最上位のエビデンスと位置付けられるものなので信用してしまいがちなのですが、もと論文全部読んでいる人からするともとの論文のこの部分がダメだからこの結論は間違っていると理路整然と説明しています。いい意味でキチガイ(褒め言葉)です。さすが神様。

ものすごい腑に落ちる勉強ができます。
楽しくて仕方がない。

ちなみに、あくまできちんとした理論に基づいた治療を受けている場合です。
日本で一般的な保険治療の健康率は悪くて2割5分、良くて5割程度と言われています。非常に低いです。
ただ日本の歯科医師のレベルが低いわけではないんです。
保険で得られる診療報酬では治療に必要な材料や器具代、かけられる時間が限定的にならざるを得ません。
厚労省が診療報酬を赤字になる金額でしか出さないことを続けた結果、皺寄せが患者さんにいっている現状があります。


歯内療法の治療は細かいことの積み重ねです。
予後に影響を与えるネガティブな要素を最小化し、ポジティブな要素を最大化すると結果的に予後は良くなります。最善の治療をしようとすると知識も技術もコストも時間もかかります。
そういった治療を受けたいとなれば、自由診療ですがいくらでもやりますよ。
けれどね、そんなことが言いたいわけじゃないんです。

長々と書いて来ましたが1番伝えたいことは

歯内療法を受けずに済むように予防をしましょう!

ってことなんですよ、じつは。

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