歯内療法大好き人間の院長です。

さて、今回は歯内療法に使われる薬剤の話です。
歯内療法で使われる可能性のある薬剤はいろいろあります。
それぞれ目的があって、洗浄、消毒、GP溶解、貼薬など目的別に存在します。

使われなくなった薬剤(使うべきでない薬剤含む)

ホルムアルデヒド製剤(ホルムクレゾール、ペリオドンなど)

これらの薬剤は歯髄を失活させたり、根管内を消毒するために持ちいられていました。消毒作用に関しては効果のないものと証明され使う正当性を失っている薬剤です。また、発癌性が証明されている。健康への悪影響が明らかにされている。局所にとどまらず全身に波及する。といった点で日本を除く国では既に使用が禁止されていたり購入できなかったりします。歯科の各学界からも使用禁止の提言がなされていますが、国内では未だにこの事実を知らない歯科医師が購入可能なため使われ続けている場合があります。キビキノ歯科医院では使うべきでない薬剤と考えているため使用していません。

クロロホルム

一度歯内療法を受けている歯は通常、根管充填がなされています。そのほとんどはGPとシーラーによるものです。このGPとシーラーを除去する際に溶解剤として使われていたのがクロロホルムです。現在は、クロロホルムに発癌性がある(人間においては確認されない)こと。健康への悪影響が考えられていたため、ほとんど使用されなくなっています。局所的に使用し根尖孔外に漏出しない分には影響がないとそれでも使われる先生もいます。なぜなら、これ以上に即効性があり簡単に除去できるものがないからだそうです。ですが、本当に漏れていない証明はできないので、キビキノ歯科医院では使用しない薬剤です。ラバーダムを用いて、使用する分(一滴程度)だけを使う分には影響が全く無いと結論づけられているようです。勉強不足でした、すみません。

H2O2(過酸化水素)

自分達が学生時代、交互洗浄といえばNaOClとH2O2を交互に使うというものでした。
アルカリ性と酸性の薬剤ですので、混ざると中和反応が起こり発泡します。これが根管内の汚れを洗い流してくれると教えられたのですが、現在では無意味と証明されてしまいました。それどころか、根管内消毒を行うNaOClの消毒効果を減弱させるため交互洗浄において使用しない方が良いと考えられています。
ただし、根管内からの出血が止まらない場合など止血効果が期待できるためそういった目的で使うことはあります。

NaOClとCHXを混合すること

それぞれ、単独で使うぶんには問題はありません。ですが、混ざり合いその過程でできる化学物質が有害です。そのため、使用する場合はそれぞれの薬液が混合しないように徹底的に水で動的洗浄(LAI,EDDY,PUIなど)を行ってから使用します。

洗浄及び消毒に用いる薬剤

現代の歯内療法では、根管の拡大形成だけでは根管内の6割程度しか触ることができない。薬液を使いその足りない部分を補うという考え方です。そのため洗浄や消毒を効果的に行えるように拡大形成を行います。洗浄、消毒の役割がとても大事です。代表的なものについて紹介します。

NaOCL

洗浄、消毒に用いられます。
根管内にはバクテリアや壊死した歯髄、腐敗した有機物などが存在している可能性があります。これらを、除去し消毒する効果がある薬剤です。次亜塩素酸には、有機質を溶解しバクテリアを死滅させる効果があります。

EDTA

洗浄効果のみで消毒効果はありません。
無機質溶解作用があります。無機質と有機質が混じり合った切削粉が根管内の至る所にこびりつきます。これらが、消毒剤が行き渡るのを阻害したり有機質を含んでいるのでバクテリアの温床になる可能性が否定できないため取り除く目的で使います。その際、歯質表面も脱灰されコラーゲン繊維が表層に現れてしまう可能性があるので使用後にNaOClを使いバクテリアの足場になりうる有機質は再度溶解させます。

CHX

難治症例の根管内にいるある種のバクテリアは、NaOClによる消毒では死滅しません。これらに有効と言われているのが、CHXです。Er:Yagレーザーでも効果があると言われていますがコストが高杉晋作なのでより簡便で効果の高いCHXが選ばれる傾向があります。ですが、前述したように『混ぜるな危険!』有害物質が生成される可能性があるので正しい知識をもって使います。

薬液をただ使うだけではダメ

これらの薬剤は、根管内に行き渡らせなければならないし根尖外に押し出してもダメです。当たり前ですが動的洗浄法の特徴を知り適切な使い分けをしなければかえって悪い結果を招くことさえあります。

GP溶解剤

GPによる根管充填がなされている場合にどうしても取りきれない場合に使うことが多いです。
国内で簡単に手に入るものはGPソルベントとユーカリソフト+です。前述のクロロホルムに比べ溶解力に劣るため、海外の先生だとオレンジオイルをおススメしてきます。

貼薬

根管充填をしない場合、次回の治療まで根管内のバクテリアの増殖や侵入を抑え数を減らす目的で行います。(ただし、妥協のない治療ができる場合に限り、貼薬せずに一回法で根管充填までしたほうが成績が良いこともあります。)

現在は、ほぼ水酸化カルシウム製剤一択です。
過去には、ホルムクレゾールやペリオドンが用いられた時代もありましたが、上述したように現代において使用してはいけないと考えられています。

洗浄時の水

海外では、水道水にバクテリアが多量に含まれていることがあります。そのため、米国などでは歯科に使用できる水質基準があります。

翻って日本では、水道水に以下のような厳格な基準が設けられています。

一般細菌 : 1mlの検水で形成される集落数が100以下であること
 大腸菌 : 検出されないこと (ただし、検水量は100ml)

それでもごくわずかな量のバクテリアは、混入する恐れはあります。

理想を言えば、洗浄水は滅菌水や生理食塩水を使いたいですがコストの面で保険診療の歯内療法では不可能です。いくら「愛」がと思っても持続不可能なためできません。

ですが、自由診療では可能です。自由診療においては、コストパフォーマンスは悪くなりますが最善と考えられる治療が可能となります。キビキノ歯科では、Adecのユニットを使っているため使用する水を好きなもの(滅菌水、生理食塩水など)に切り替えることができます。それとは別に滅菌水を用いたLAI(Laser activated irrigation)を自由診療では取り入れています。

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